ギター&音の世界

【テキストタブ譜とは】
タブ譜は、ギターやその他のフレットのある楽器のための楽譜の1つです。テキストタブ譜は、タブ譜の内容を視覚に障害のある人が利用できるようにテキストファイルの形式にしたものです。このHPの管理者が中心となって、何人かの人で考えた楽譜の1つです。

【テキストタブ譜誕生の経緯】
ある中途失明の方が、「若い頃演奏していたギターをもう一度演奏したい。知っている曲なら、弦番号とフレット番号だけを書いたデータがあれば思い出しながら弾くことができる。誰か作ってくれる人はいないか。」と管理人が所属する点字楽譜作成のボランティア団体にメールを出したことから始まります。2021年3月23日のことです。ボランティア団体の代表は、点字楽譜を作成する団体なのタブ譜のデータ化は難しいという判断でした。ただ、私がギターが好きなことをご存じだった代表は、メンバーの一人(ビースコアの開発者)に相談しました。そして、私のところに、先ほど紹介したメールが転送されてきました。
ギター(いわゆるクラシックギター)を大切にしてきた私としては、何とかその中途失明の方の願いを叶えて差し上げたいと思いました。
そして、その方の意見も伺いながらテキストタブ譜の書き方の規則をつくりました。
まだ不完全なところもあると思いますが、公開することができると判断しました。
皆様のご意見をお寄せください。

【テキストタブ譜の書き方】
①例えば、2弦の1フレットの音を、「2g1」と書き表します。「g」の前の「2」は2弦、「g」のあとの「1」は1フレットを表しています。「g」は「string」の最後の文字です。「s」を使いたかったのですが、スラーを表す「s」とダブってしまう。そこで、弦(gen)につながる「g」にしました。※「」は引用のために付けたものです。実際は「」は書きません。以下同じです。
②「2g1」の音が4分音符の場合は、「4n2g1」と書きます。「n」は「note」の頭文字です。
③音を続けて書く場合は、音と音の間に「,」を入れます。また、同じ長さの音が続く場合は、「4n」等の音の長さは省きます。
 例:4n2g1,2g3,1g0 「0」は開放弦を表します。
④1小節ごと1行に書きます。小節番号は1小節の場合、「1m」と書きます。小節番号の行には、音は書きません。「m」は「measure」の頭文字です。
⑤小節が変わった場合は、前の音と同じ長さの場合でも、「8n」等は書きます。
⑥付点音符は、音の長さのあとに「.」を付けます。複付点音符は、「..」を付けます。
 例:付点2分音符は、「2n.」と表します。
⑦左手、右手の指定は、音のあとに左手は「l2」、右手は「ri」と書きます。両方の指定がある場合は、左手右手の順に書きます。「l」は「left」、「r」は「right」の頭文字です。
 例:8分音符3弦2フレットの音を左手2、右手aで弾くときは、「8n3g2l2ra」と書きます。
⑧タイは、音のあとに「t」と書きます。タイでつながれた音は書きません。ただし、音を書かないと拍数が合わなくなってしまう場合は、音の長さだけを「()」で囲んで書きます。ソロ曲の場合、タイでつながれた音を書かなくても、拍数が合わなくなってしまうことは、少ないように思います。
⑨休符は「r」を付けます。
 例:4分休符の場合は、「4r」
⑩和音は、音と音を「&」でつなげます。高い方の音から書きます。
 例:1g0&2g1&3g0&5g3
今まで書いたこと以外の書き方については、「テキストタブ譜の書き方」をご覧ください。クリックすると、読むことができます。
※「2g1」の前に音名「ド」を入れて、「ド2g1」としたり、「4n」を「4分音符」としたり、テキストタブ譜を利用する人が読みやすい形式にすることにも、対応しています。  

【テキストタブ譜の例】
例1(単音)
喜びの歌の楽譜
<テキストタブ譜>
よろこびのうた
さっきょく ベートーヴェン
ひょうし 4/4
ちょうごう なし
1m
4n1g0,1g0,1g1,1g3
2m
4n1g3,1g1,1g0,2g3
3m
4n2g1,2g1,2g3,1g0
4m
4n.1g0,8n2g3,2n2g3
5m
4n1g0,1g0,1g1,1g3
6m
4n1g3,1g1,1g0,2g3
7m
4n2g1,2g1,2g3,1g0
8m
4n.2g3,8n2g1,2n2g1
説明
①1行目に曲名を書きます。※点字にすることも考えられるので、ひらがな表記にしています。
②次の行に作曲者名を書きます。編曲者がいる場合は、その次の行に書きます。
③次の行に拍子を書きます。
④次の行に調号を書きます♯が1つの場合は「sharp1」、♭が2つの場合は「flat2」と書きます。ない場合は「なし」と書きます。
⑤次の行から楽譜を書いていきます。小節番号は1行使います。

例2(単音、二声)
カーノ練習曲の楽譜
<テキストタブ譜>
れんしゅうきょく
さっきょく A.カーノ
ひょうし 2/4
ちょうごう なし
1m
|:8n5g0rp,3g2l2ri,2g0rm,2g1ra
2m
8n5g0,2g1,2g0,3g2
3m
8n6g0,2g0,2g1,2g3
4m
8n6g0,2g3,2g1,2g0
5m
8n5g0,3g2,2g0,2g1
6m
8n4g0,2g3,1g0,1g1
7m
8n4g2,1g0,6g0,3g1
8m
4n3g2,5g0:|
9m
|:8n4g2l2,1g0,2g3l4,2g1l1
10m
8n6g0,2g0,3g2,3g1
11m
8n5g0,2g1,2g0,3g2
12m
8n6g0,2g0,4n4g2rp
13m
8n5g0,3g2,2g0,2g1
14m
8n4g0,2g3,1g0,1g1
15m
8n4g2,1g0,6g0,3g1
16m
4n3g2,5g0:|
説明
①「|:」や「:|」は繰り返し記号です。
②1小節目の最初の音は、2分音符です。しかし、テキストタブ譜では8分音符で書いています。テキストタブ譜は音の長さを表しているのではなく、次の音を弾くまでの長さを表しています。つまり、最初の「5g0」をどこまで伸ばすかをしていません。こういう意味では、テキストタブ譜は不完全な楽譜だと言えます。この問題を解決するためには、点字楽譜で使われている「部分け」という方法を使うことになります。

<テキストタブ譜(日本語)>
テキストタブ譜の内容をできるだけ日本語表記にして、音名を入れたものを以下に載せます。
れんしゅうきょく
さっきょく A.カーノ
ひょうし 2ぶんの4
ちょうごう なし
1小節
繰り返し
8ぶ音符ラ5弦開放弦右p,ラ3弦2フレット左2右i
シ2弦開放弦右m,ド2弦1フレット右a
2小節
8ぶ音符ラ5弦開放弦,ド2弦1フレット
シ2弦開放弦,ラ3弦2フレット
3小節
8ぶ音符ミ6弦開放弦,シ2弦開放弦
ド2弦1フレット,レ2弦3フレット
4小節
8ぶ音符ミ6弦開放弦,レ2弦3フレット
ド2弦1フレット,シ2弦開放弦
5小節
8ぶ音符ラ5弦開放弦,ラ3弦2フレット
シ2弦開放弦,ド2弦1フレット
6小節
8ぶ音符レ4弦開放弦,レ2弦3フレット
ミ1弦開放弦,ファ1弦1フレット
7小節
8ぶ音符ミ4弦2フレット,ミ1弦開放弦
ミ6弦開放弦,シャープソ3弦1フレット
8小節
しぶ音符ラ3弦2フレット,ラ5弦開放弦
繰り返し
9小節
繰り返し
8ぶ音符ミ4弦2フレット左2,ミ1弦開放弦
レ2弦3フレット左4,ド2弦1フレット左1
10小節
8ぶ音符ミ6弦開放弦,シ2弦開放弦
ラ3弦2フレット,シャープソ3弦1フレット
11小節
8ぶ音符ラ5弦開放弦,ド2弦1フレット
シ2弦開放弦,ラ3弦2フレット
12小節
8ぶ音符ミ6弦開放弦,シ2弦開放弦
しぶ音符ミ4弦2フレット右p
13小節
8ぶ音符ラ5弦開放弦,ラ3弦2フレット
シ2弦開放弦,ド2弦1フレット
14小節
8ぶ音符レ4弦開放弦,レ2弦3フレット
ミ1弦開放弦,ファ1弦1フレット
15小節
8ぶ音符ミ4弦2フレット,ミ1弦開放弦
ミ6弦開放弦,シャープソ3弦1フレット
16小節
しぶ音符ラ3弦2フレット,ラ5弦開放弦
繰り返し
【演奏順序】
1小節~8小節
1小節~8小節
9小節~16小節
9小節~16小節
説明
①1行に2つの音を書くようにしています。この曲には出てきませんが、和音は、1行に1つにしています。
②Pc-Talkerで読むことを前提にしているので、4分音符は「しぶ音符」と書いています。